【著者プロフィール】
有家 尚志
2012年 理学療法免許取得(日本) 一般病院、通所介護施設勤務
2015年 Coventry大学修士課程入学
2016年 HCPC登録(イギリス理学療法士免許取得)、Coventry大学卒業 (MSc Advancing Physiotherapy Practice)

イギリス理学療法士の概要

 総人口は約6.5千万人1)。NHSという保険制度のもと、国民は理学療法を含む医療サービスを無料で受けることができます(歯科や眼科などは例外)。

 理学療法協会会員は42,293人2)(有資格者数51,835人、2016年3))。国家試験はなく、養成校を卒業すると理学療法士(以下PT)になれます。PTという職業は、HCPCという機関で管理されており、そこに登録する必要があります。理学療法は、NHSを介して、または個人で直接予約して利用することもできます4)。地域によっては、医師の処方箋なく直接利用することもできますが、イギリス全土ではありません5)

教育について

 現在35の認可された養成校があり6)、学士で3年または修士で2年間となっています。卒後教育の修士や博士課程もあります。日本のような研究コースに加え、徒手療法や呼吸循環器、神経系など専門的な分野をコースワーク主体で学ぶコースもあります。約1年間で学位をとることができます。特に、IFOMPT(国際整形徒手理学療法士連盟)に認定された徒手療法コースがあり、人気があります。

 PT免許は2年ごとの更新制であり、監査を受けた際に、CPD(いわゆる卒後教育)の成果を提示できなければ更新できません。

職域

 病院勤務も多いようですが、PTとして開業が可能であり、理学療法クリニックも多くあります。耳鼻咽喉科やスポーツチーム、慈善団体、産業領域などでも活躍しています7)。プロサッカーチームには数人のPTが在籍していることもあります。

 ある一定のトレーニングを受けると、PTが注射や薬の処方なども可能であり、日本と比較すると職域が広いようです。

イギリス理学療法士の待遇

 NHSの病院で働く場合は、すべての医療職にBandという階級があり、能力に応じて、昇給していきます。この評価項目には、「修士や博士号保有または同等の能力」など、単に臨床経験の長さだけを反映していない客観性があります。

 初任給はNHSで年間、21,176ポンド(1ポンド135円で約285万円)程です5)

参考ウェブサイト