海外リハビリ事情

「海外リハビリ事情」では、リハビリテーション(理学療法・作業療法)について海外の動向や、現在海外で活躍している理学療法士・作業療法士の方々へのインタビューなどを多数掲載しています。
海外のリハビリテーション情報が気になるPT・OTさん、ぜひチェックして下さい。

※過去、PT・OTコラム(会員限定)等に掲載されたコンテンツを再編集し、一般公開しています。

ヨルダンからの活動報告

【著者プロフィール】
石井 博之/国際医療福祉大学・理学療法学科 講師。国際医療福祉リハビリテーションセンター・リハビリ室 主任。主な著書「ザ 歩行/義肢の歩行」「地域理学療法学ノート」(いずれもアイペック刊)。

第3回 活動報告

 第2報からちょっと時間が経ってしまいました。前回は春でしたが、今は8月、夏真っ盛り。5月頃から全く雨が降っていません。

 よく日本人は晴れた日に人に会うと、「いい天気だね。」と言いますね。こっちでそれを言うと皆さんあまりぴんとこないようで、雨期の雨の日の方がうれしそうです。

 また最近は日中40度を超える気温と、強烈な太陽光線で、外にいると立ちくらみがするような暑さですが、空気が乾燥しているため、室内は結構涼しく感じます。日本の多湿な夏と比べるとこちらの方が過ごしやすいようにも感じます。

 ところで今回は、私が今行っていること、つまり活動内容を報告すると、前回述べました。しかしその前に活動を理解していただくにあたり、ヨルダンのリハビリテーション事情について今回は報告させていただきます。

 ヨルダンでは理学・作業療法士の養成校は大学が3校、専門学校が2校あり、都市部のリハビリテーションは比較的高水準であると感じます。

 しかし多くの理学・作業療法士は都市部で働きたいという意向が強く、農村部ではリハビリテーションサービスはあまり働いていません。また、ヨルダンよりさらに高収入の得られる、湾岸諸国(サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの産油国)へ就職を希望する人も多くいます。

 日本人は言葉の問題で、海外で働くことに躊躇しますが、同じアラビア語を話し、同じ宗教、同じ文化を共有するアラブ諸国では人の行き来は自由なようです。逆にここにいてもエジプトやスーダン、イラクやその他アラブ諸国から来た人々と普通に接します。

 彼らはやはりより高収入を求めたり、また戦火から逃れてきたりと、事情はそれぞれのようですが、国境という垣根の低いことを感じます。

 話がちょっとずれてしまいましたが、この都市部と農村部の地域格差に加え、もう一つの特徴はリハビリテーションそのものに対する考えにあります。

 ヨルダンの人々のほとんどはイスラム教徒であることはご存じのことと思います。イスラム教では物事の多くは「神のご意志」であり、障害に対する予後予測など、将来のことを人間が決めること、他人に言うことは許されないそうです。

 つまり障害への告知があり、それを受容し、生活設計を立てるという、リハビリテーションには当然必要なプロセスがなされにくいことが現実です。そのためリハビリテーションは障害を治癒させること、つまりノーマライゼーションに主眼を当てたものとなります。

 これは決して否定されるべきものではなく、むしろ尊重した上でどのように地域に暮らす障害者の生活を支えるかが課題であると思います。

<2008/08/06 PT・OTコラム「ターニングポイント」に掲載>

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