海外リハビリ事情

「海外リハビリ事情」では、リハビリテーション(理学療法・作業療法)について海外の動向や、現在海外で活躍している理学療法士・作業療法士の方々へのインタビューなどを多数掲載しています。
海外のリハビリテーション情報が気になるPT・OTさん、ぜひチェックして下さい。

※過去、PT・OTコラム(会員限定)等に掲載されたコンテンツを再編集し、一般公開しています。

セラピューティックレクリエーション 第5回

【著者プロフィール】
長谷川 真人・理学療法士。2001年New York University修士課程合格。日本理学療法士免許取得後、渡米。2005年5月 Certified Therapeutic Recreation Specialist資格取得、のちにNew York州PT免許取得。2008年3月〜現在は東京大学医学部附属病院に理学療法士として勤務。

TRの日本への導入

 TRに関するコラムの最後となりましたが、今回は、TRがどのように日本の医療、リハビリテーション現場に浸透していけるかの可能性を考えてみたいと思います。

 アメリカのTR現場での臨床経験を通して、TRは患者さんのQOLを高めるために、非常に必要とされているアプローチだという事を強く感じました。

 医療、リハビリテーションでは、個々の障害、病気の治癒が目標とされていますが、それだけでは十分ではありません。具体的には、大腿骨頸部骨折が手術で整復されて、リハビリテーションで屋内歩行、屋外歩行が可能になっただけでは、完全な治癒とはいえなく、その状態で如何に自分がしたいこと、例えば、近隣のショッピングセンターへの買い物に行くなど、を実現させていく技術、知識を身につけてもらうかがTRの過程であり、それは全人的なQOL向上を目指す医療、リハビリテーションにおいて、必ず提供されるべきサービスです。

 しかし現状では、医療制度、保険請求の影響により、日本でのTRサービスの直接導入は困難だといえます。では、どうすればいいのでしょう。

 先ず日本ではTR的介入は全く行われていないわけではなく、PT、OT、ST、看護師、介護士等の様々なアプローチの中で活用されている事を実感する必要があります。

 例えば、PTが主導となる集団体操で音楽を使用して治療的効果を促進する方法も行われています。OTに関しては、レクリエーション活動をOTに応用する事はしばしばあると思います。これらの専門職がより実証されたTRアプローチを理解し、臨床現場で活用していく事が求められていると思います。TRに関する正確な知識、理解を深める事が大切です。

 また、TR活動を推進する際にボランティアの協力が重要です。多くのTR活動はボランティアの協力により、充実したものになります。私がニューヨークの介護施設にいた際には、ボランティアが様々にTR活動に関わっていました。

 夏休みに多くの学生ボランティアが参加し、TR活動のアシスタントを精一杯頑張って実施してくれました。あるボランティア団体は、無償で入所者にお化粧をするサービスを実施してくれましたし、近隣の大学院のコーラスサークルの学生が無償でコンサートを実施してくれました。普段は施設のスタッフが出来ないTR活動をボランティアが積極的に行ってくれ、結果として入居者のQOLを向上させていました。

 日本では、少しずつ、ボランティア活動が盛んになってきていますので、PT、OT、STがリハビリテーション分野でのTR的活動にボランティア育成を行い、積極的な活用を図っていく事が求められていると思います。

 他にも、将来のTR活動浸透のために、CTRSのような専門資格を設立する必要性があるかもしれません。TRに関する研究発表を実施しエビデンスを構築していく活動も必要とされています。

 TRの活動自体、まだ日本では知れ渡っていませんが、今後の医療、リハビリテーションの中で大いに注目されていく分野でしょう。

写真:セラピードッグのボランティアグループ

セラピードッグのボランティアグループ

<2008/12/22 PT・OTコラム「グローバルNAVI」に掲載>

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