ベトナム タンチャウ県総合病院での活動報告

 私の勤務するタンチャウ県総合病院(病床数150床)東洋医学科は、理学療法士はおりません。今まで、患者さんには針灸と漢方薬処方で対応してきたようです。今まで片麻痺の患者さんにはリハビリを行わず、針のみの処方でした。ですので、入院中に2、3日、針灸をし、退院。その結果、患者さんは歩けるようになってから病院にまた通ってくるという状況でした。

 JOCVが入ることにより、リハビリを行い、機能回復を図るという形で進めています。
 私の活動内容は、①患者さんへの機能回復の提供、②現地スタッフに理学療法の知識を伝えることです。実は、東洋医学科なので、配属先には平行棒も治療ベッドも何もないのです。歩行介助のときはベッドの手すりを持ってもらって歩いてもらっています。今後は治療ベッドを作成予定です。

 今でもお家が遠い患者さんは退院したら来られることはないのですが、立ち上がりや座位保持など、自宅で行えることはやってもらうように助言しています。寝たきりの患者さんが減ったらいいなと思っています。
(自宅に帰られた患者さんのその後は把握することができないのが問題です)

 この病院で理学療法というのは、初めてのことなので患者さん、来るもの拒まずで、いろんな疾患を見て自己判断で治療しています。日本での経験が少ないため、患者さんが満足できる治療を行えているか心配ですが、基本的な治療を今後も現地スタッフに伝えていきたいと思っています。

 いつか、チョーライ病院のスタッフがベトナム人に理学療法について指導をするときがきたら、『あのとき、あの日本人が言ってたな』 と思ってもらえるのが夢です。

病院の写真

病院の写真

CPの子供のバランス訓練中

(CPの子供のバランス訓練中)

左片麻痺の患者さんのバイク乗車時

(左片麻痺の患者さんのバイク乗車時)

副科長のお家で

(同僚と副科長のお家で飲んだときの写真)


【著者プロフィール】
野口ゆかり・理学療法士。青年海外協力隊(JOCV)隊員としてベトナムで活動。ベトナムアンザン省に初めて派遣されたJOCV隊員の1人。

上へ ▲

ベトナム〜トゥインクワン省総合病院での活動報告

 ベトナムに来る前、大分の病院で5年間働いていました。2年間は鈴木病院という胃腸、肛門科が専門の病床数20という小さな病院で働いていました。上司の理学療法士の方は常に患者さんの事を考え治療し、私も将来このような理学療法士になりたいと思いました。そこで2年働き、基本的なことを学び、急性期を勉強したいと思い、国東市民総合病院で働き始めました。この病院では多くの疾患を学ぶ事が出来ました。3年働いた後、病院に籍を置いたまま現職という形で協力隊参加を許可していただきました。

 現在私は、トゥインクワン省総合病院のリハビリテーション科に理学療法士として配属されました。トゥインクワン省とはハノイから北西に160キロに位置します。現在はバス、車、バイクでの移動手段しかなく、ハノイからバスにて約5時間かかります。
 トゥインクワン省最大の総合病院です。17科からなりスタッフは約400人 病床数は約350床です。


病院玄関

(病院玄関)

 リハビリテーション科は2006年9月よりドイツODAよりの機械の供与があり、以前東洋医学科、リハビリテーション科、皮膚科の3つが併設していたのが、リハビリテーション科と皮膚科になりました。そこで、ハード面だけでなく、ソフト面の充実も図りたいとの事で協力隊要請があがったようです。

機能訓練室

(機能訓練室)

 リハビリテーション科のスタッフ数は7名。
 医師2名(リハドクター、皮膚科ドクター)理学療法士3名、看護師2名。私を入れて8名です。私の同僚(他の理学療法士)は42歳、43歳、48歳とこの道20年以上の方々で、なかなか活動が難しく。他の理学療法士が学生時代に学んだ事を聞いてみると、針灸、ツボ押し、マッサージ、整体、関節の動かし方等など東洋医学の考えの比重が高い印象を受けます。

 また関節の動かし方もなかなか力強く、患者さんが痛いところまで動かすのが基本らしく、私がゆっくり、痛みを出さないようにする、関節可動域訓練は受け入れてもらえず、いつも注意されています。私も少し話せるようになってから、痛みが強いと患者さんが返って筋肉を固くしてしまから、悪いと思うのですがと意見しています。

 まあ毎日こんな感じで、自分の意見を少しずつ言いつつ活動しています。
 

同僚の関節可動域訓練

 (同僚の関節可動域訓練)

 また、他の理学療法士は機能訓練をしておらず、現在は私一人患者さんに、基本動作訓練、ADL訓練をしています。

 ここの理学療法士には患者さんの家族がするものであって、理学療法士はしないものと思っているらしく、私が行うと注意されます。しかし、ドクターから私に指示があって行っているわけですので、その事を言うと、「そう」という感じです。

 現在の私の目標は、患者さんが痛くない関節可動域訓練でも可動域が向上すること。機能訓練の必要性を理解してもらい、機能訓練を定着させることです。まだまだ、出来ていませんが、任期が終了するまでに少しでも定着出来たらと考えています。


【著者プロフィール】
阿部典子・理学療法士。日本国内で5年間PTとして病院に勤務後、青年海外協力隊(JOCV)平成19年度1次隊隊員としてベトナム・トゥインクワン省総合病院リハビリテーション科に配属

上へ ▲

ベトナムバクザン省ハンディキャップチルドレン村

私の配属先は、バクザン省ハンディキャップチルドレン村という障害児療育施設です。ここで、理学療法士として、同僚看護師とともにリハビリテーション業務を行っています。

この施設は、2003年、ある日本人の支援から設立されたバクザン省唯一の療育施設です。現在は、国内外の団体(フランスが主)からの支援も受けています。教育、職業訓練、リハビリテーションの3部門からなっていて、省内の児を対象に、40名の入所児(聴覚障害20名、肢体不自由児14名、知的障害児6名)および通所児(登録)約50名がいます。年齢は6歳から16歳。スタッフは、医師2名、薬剤師1名、看護師5名、養護教諭2名、刺繍講師1名、他。小さな施設ですが、まだ新しく、色々な可能性を持っている施設でもあります。

教育訓練の質および障害児の社会参加を含めた療育の向上を図るということを目標として、私がここへ派遣されました。ここで私は、肢体不自由児を対象に理学療法を実施するほか、聴覚障害児や知的障害児とも遊びを通して関わっています。カウンターパートは看護師ですが、看護師たちはその他の業務が忙しいため、ほぼ一人で元気いっぱいの子どもたちと格闘中です。最近では、養護教諭と連携して、児の教育・療育計画書を家族宛に作成。刺繍講師とは、地域交流ツールとしての作品創作について協力し合うなど、各部門の連携を図っているところです。 

また、NGO「ベトナムの子どもを支援する会」が、バクザン省でCBR普及プロジェクトを実施中。当施設においても、地域との交流や、施設の活動についてアドバイスをいただいています。

省内にはまだまだ多くの障害児が在宅で生活しています。マンパワーの問題もあって、この施設で過ごせる子どもたちは限られています。障害も軽度です。バクザン省における障害児支援については、まだまだ課題はたくさんありますが、まずは、子どもたちにとってこの施設で過ごす時間が有意義なものとなるよう、スタッフたちと一緒に考え、取り組んでいこうと思っています。


【著者プロフィール】
新井智子・理学療法士。青年海外協力隊(JOCV)隊員としてベトナムで活動。

上へ ▲