【著者プロフィール】
佐久間 善子
2017年 国際医療福祉大学 小田原保健医療学部 理学療法学科 卒業
理学療法士免許取得
順天堂医学部附属静岡病院 リハビリテーション科 理学療法士 入職
2021年 Imperial College London, Master of Public Health (公衆衛生学修士) 入学
2022年 Imperial College London, Master of Public Health 卒業
London School of Hygiene and Tropical Medicine, Research Assistant 入職

2021年9月に渡英し1年間はロンドンで生活を、2022年8月からはオックスフォードに居を移しておりますが、ここではイギリスでの食・生活事情に関して書かせて頂きます。

住居

 イギリスで修士や博士をされる方のほとんどは学生寮に滞在されることかと思います。Imperial College Londonに限って言えば、修士・博士の学生用の寮が無く(あんなに学費高いのにどこに消えているのかと愕然としましたが)ロンドン内に自分で部屋を借りる必要がありました。ロンドンは世界でも4番目に生活費が高いことで有名で、特に家賃は1Kに住むのに月額25〜30万以上払わなくてはなりません。そんな事情もあり、私の同級生を含み多くの学生はシェアハウスに住むことを選択していました。シェアハウスであれば家賃を月々15万程度に費用を抑えることができます。ほとんどの大学は学生向けに寮を提供してくれるかと思いますが、万が一自分で探す必要がある場合には、日本から渡航前に遠隔で住居を探すよりも、可能であれば最初はホテル暮らし、ないしAirbnbなどに住みながら実際に内覧をして探した方が間違いがありません。

上へ ▲

食事

 "イギリス料理はまずい"というのが広く知られた通説ですが、イギリス料理がまずいと言うよりは日本とは違って"安い"と"美味しい"が両立しない、そしてお店に当たり外れが大きいと言うのが正しい解釈ではないかなと思っています。お店も選べば美味しいところが多いですし、その分外食は比較的高くついてしまいますが、自炊をするための食材は欧州産のコシヒカリやお刺身、薄切りのお肉、アジア系のお野菜(大根や蓮根、薬味野菜)などロンドンですと色々なところで手に入ります。
 かつロンドンは世界中から様々なバックグラウンドの方々が集まってくる多様性都市ですので、インド料理をはじめとし、イタリアン、スペイン料理、ポーランド料理など様々な食文化を楽しむことができます。ハラルやビーガンなど個人のニーズに合わせた食生活を選択しやすい・楽しみやすいのもこちらならではです。

The Golden Hind Restaurant のFish and Chipsはオススメです(写真はChips抜きですが)

上へ ▲

医療

 イギリスに居住している人は国民保健サービス(NHS)に加入することが義務付けられています。各個人にNHS Numberが割り当てられており、クリニックや薬局、歯科治療を受ける際の全ての情報がこの番号に紐付けられています。転居したとしても前医からの情報は全てデータベース上で参照できるようになっているので、既往歴や治療歴・服薬歴を問診で毎回提出する必要がありません。治療費に関しても国民保険サービスの年間保険料を納めていれば、診療・治療・救急対応に至っても基本的に料金が発生せず、GP:かかりつけ医に行っても会計をする必要はありません(処方箋には一律料金が発生します)。また、コロナ禍でオンライン診療のシステムが発達したこともあり、各GPのホームページ上で症状や希望、写真を提出すると遠隔で医師が診療、最寄りの薬局で薬をピックアップできるように処方を手配してくれます。
 また、個人的に助けられているのが女性特有のニーズに対する手厚さで、生理用品はナプキン・タンポンともに学校で無料配布されていますし、薬局で買うとしても消費税がかかりません。他にも、HPVワクチン接種(これには年齢制限がありますが)・子宮頸がん検診・ピルの処方(最大半年分処方してくれます)も全て無料です。日本で服用していた内服・注射がある場合は英訳した処方箋・もしくは外箱を持参するとこちらの薬に切り替えをするのに非常に便利かと思います。

上へ ▲

休日の過ごし方

 イギリスは陸空の交通網が非常に発達していますし、ヨーロッパの国々とも地理的に近いですので、思い立ったときにふらっと国内・国外へ小旅行出来るのがとても良いところだなと実感しています。ヨーロッパであれば格安航空が飛んでいるので往復の航空券が数千円で買えますし、パリへは特急列車で直通、2時間半で到着します。少しロンドンから郊外に出るとNational Parkとして国に保護されている森や山といった自然が多く存在しています。日本と車の走行車線が同じですし、こちらに住んで12ヶ月以内であれば日本の免許証で運転ができるので、車で郊外までドライブを気軽に楽しめるのも魅力です。
 また、地理的に地震が無い国ですので、歴史ある建物・史跡名勝・美術品の保存状態がとても良く、道を歩けば遺跡や博物館・美術館に行きあたる、まさに歴史とともに生きている"大英帝国"としての側面も楽しめます。「ロンドンに飽きた者は人生に飽きた者だ」と、かのSamuel Johnsonも述べたようにイギリス、ロンドンには芸術、食、文化、自然といった様々な側面で何十世紀も前から人々を魅了し続ける理由があるように思います。

とても過ごしやすい気温の夏のロンドン。気温も湿度もそこまで上がらないので一般家庭にクーラーはありません(今年は熱波の影響で一時期暑かったですがカフェに避難しました)。

ロンドンから日帰りで行けるコッツウォルズの村のひとつ、Bourton-on-the Water。昔のイギリスの原風景がそのまま残っています。

上へ ▲