【著者プロフィール】
佐久間 善子
2017年 国際医療福祉大学 小田原保健医療学部 理学療法学科 卒業
理学療法士免許取得
順天堂医学部附属静岡病院 リハビリテーション科 理学療法士 入職
2021年 Imperial College London, Master of Public Health (公衆衛生学修士) 入学
2022年 Imperial College London, Master of Public Health 卒業
London School of Hygiene and Tropical Medicine, Research Assistant 入職

イギリスの理学療法士免許の取得に関しては有家先生がこちらの記事に詳しくまとめてくださっているのでそちらをご参照頂ければと思います。ここでは2023年1月時点でのイギリスにおける理学療法士免許の申請方法の変更点、またイギリスの理学療法士の給与水準・勤務待遇に関してかいつまんで補足させて頂きます。

理学療法士免許の申請方法

 有家先生がおっしゃっているように日本の理学療法士免許を保持している者に関しては、基本的に書類申請のみで書き換えが完了します。日本で言うところのコメディカル職はHealth and Care Professional Council (HCPC)1)というヘルスケア専門職の法定機関に登録をする必要があります。以前は全ての書類をポストに投函しなくてはならなかったInternational Applicationの申請手続きは2022年4月より完全オンラインに移行しているので、以前よりも申請は簡便になっています。
 一点注意をしなくてはならないのが、書類を揃えて出せば良いだけではなく、全ての提出書類に認証が必要だという事です。これにはPDF化した書類の原本が偽造ではなく本物であることを証明する文言を承認に直筆で書いてもらう必要があるのですが、この認証をお願いできる人は"職業上の責任を持つ人"に限られており、HCPCのWebページ上には以下のような例が挙げられています2)

- イギリスで登録されている医療専門家
- 弁護士、弁護士、会計士、公証人などの専門家
- 教師や講師
- 銀行マネージャー、投資マネージャー、株式仲買人
- イギリス軍の将校
- 治安判事、領事官またはその他の司法官
- イングランド国教会の牧師、ラビ、イマームなどの宗教関係者
- 国会議員

 こちらの院に進学する人ですと大学の教授や講師の方にお願いをする事ができますし、頼める知人がいない場合には有償ではありますが、弁護士・税理士事務所が書類の認証を行なってくれます。
 より詳細なステップに関しては公式サイトをご参照ください。不明点に関しては窓口に電話をすれば親切に教えて下さいます(メールですと待てど暮らせど返事が来ません)。

上へ ▲

イギリスで理学療法士として働く

 イギリスには約56,000人の理学療法士が居るとされ3)、年次によって給与は変わりますが平均的な年収は430万〜650万円(£1=158円で換算)程度です4)。イギリスの医療は National Health Services(NHS)と呼ばれる国民保健医療サービスでカバーされており、年間保険料を納めていれば診察や入院、処方など全てが無料で受けられることが特徴です。NHSが主要な勤務先ではありますが、イギリスでは理学療法士にも開業権が与えられているため、プライベートクリニックで勤務している理学療法士も一定数います。
 イギリスでは患者が理学療法士に直接アクセスできるダイレクトアクセス(患者の自己紹介)5)が推奨されています。これにより医師の処方箋が無くても理学療法を行うことが可能となっており、ダイレクトアクセスの活用によるGP(家庭医)やシステムへの負担の減少が期待されています。また、2014年より特定のトレーニングを修了した理学療法士はボトックスなどの注射療法の使用6)、一部薬品の処方が可能となっており7)、日本の理学療法士よりも業務範囲が広い事が特徴と言えるかもしれません。

参考リンク:
1) https://www.hcpc-uk.org
2) https://www.hcpc-uk.org/registration/getting-on-the-register/international-applications/documents/certifying-your-documents/
3) https://www.statista.com/statistics/318906/numbers-of-physiotherapists-in-the-uk/
4) https://www.randstad.co.uk/career-advice/job-profiles/physiotherapist/
5) https://www.csp.org.uk/news/2017-03-13-patients-must-have-direct-access-physio-says-csp
6) https://www.csp.org.uk/professional-clinical/professional-guidance/medicines-prescribing-injection-therapy/injection
7) https://www.csp.org.uk/professional-clinical/professional-guidance/medicine-prescribing-injection-therapy/prescribing

上へ ▲